処分歴データベース

朝日新聞2006.8.27 住宅関連業者、ネットで処分歴公開 国交省方針>
http://www.asahi.com/life/update/0827/008.html

 耐震強度偽装や悪質リフォームなど、住まいに対する安心や信頼を揺るがす事件が相次いだことから、国土交通省は来年度から、建築士事務所や不動産業者などの処分情報のデータベースをつくり、インターネットで公開する方針を固めた。消費者が業者を選ぶ際の「ブラックリスト」として役立ててもらうとともに、不良業者を業界から排除するのが狙いだ。

 建築士事務所や宅地建物取引業者に対する処分は、国交省出先機関である地方整備局や都道府県がその都度ホームページで公開しているが、一覧したり検索したりすることはできなかった。東横インの不正改造も含め、建物の安全と安心にかかわる問題が昨年度に続発したことから、国交省は信頼の回復には幅広い情報公開が必要と考え、データベース構築を来年度の重点施策の一つとした。

 インターネットで公開するのは、建築士事務所や宅建業者のほか、建設業者、民間の住宅検査機関、マンション管理業者に対する業務停止や戒告などの処分情報。各都道府県に情報提供を求め、業者名をパソコンの画面上に入力すれば最近数年間に受けた処分を調べられるようにする。03年からネットで公開している建設業者の処分歴データベース「コラボレーションシステム」を基礎に、内容と機能を拡充する方法を考えているという。

 国交省が来年度に設ける新しいデータベースも、当面、過去2年分程度の戒告か業務停止以上の処分情報を登録することを検討している。

 これまで国交省の担当部署がそれぞれの判断で運用してきた業者に対する処分基準も、文書で明確化し、ネット上で公表する。耐震強度偽装事件に絡んで建設会社による粉飾決算が摘発されたが、再発防止のため、企業自らの情報開示を促すガイドラインも新たに定める。

 また、エレベーター事故や外壁タイルの落下など、不特定多数が利用するビルやマンションで起きた人身事故の情報についてもデータベース化し、ネットでの公表をめざす。

<建設業界ニュース東京版 2006.8.17>
建築士処分歴などDB化 07年度から着手
http://www.kentsu.co.jp/tokyo/news/p02593.html

建築にかかわる事件が多発していることを踏まえ、国土交通省は2007年度から、建設業者、建築士事務所、マンション管理業者などの処分歴を含むネガティブ情報や建築ストック情報などを集めたデータベースの構築に取り掛かる。得られた情報は行政による指導監督に活用するとともに、インターネットで一般に公開し、消費者が事業者や建物を選択する際に役立ててもらう考えだ。
 耐震偽装問題や悪質リフォーム事件による被害が社会問題化する中、国交省は消費者の安全・安心を確保するため、事業者や住宅・建築物にかかわる幅広い情報の公開が不可欠と判断し、2007年度の重点施策に位置付けた。
 データベースのうち、企業情報にかかわる部分については、建設業者、建築士事務所、指定確認検査機関、宅地建物取引業者、マンション管理業者といった業種ごとに監督処分歴などを収集、整理する。国交省総合政策局政策課では、「建設業者の監督処分情報をインターネットで公開する現行の『建設業者の不正行為等に関する情報交換コラボレーションシステム』を消費者向けにアレンジした仕組みをイメージしている」と説明する。
 宅建業者やマンション管理業者については、監督処分基準や監督処分事案を公表。また、建設業者による企業情報の自己開示を促すためのガイドラインも作成する方針だ。
 耐震偽装問題の再発防止に向けて、社会資本整備審議会建築分科会基本部会が7月にまとめた報告案では、「建築物のストック情報、建築士建築士事務所などにかかわる各種情報を各行政機関で共有化し、必要に応じて消費者に対し情報提供できる建築行政情報の総合管理システムを整備する」必要性が示された。こうした考え方に基づき、建築ストック情報として、▽建築計画の概要▽建築物の事故情報―などを想定している。

(参考)
建設業者の不正行為等に関する情報交換コラボレーションシステム
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/const/kengyo/collaboration/index.html

産業廃棄物処理業・処理施設許可取消処分情報
http://www.env.go.jp/recycle/shobun/shobun.html

不勉強にもこれらの仕組みのことを知らなかったのですが、不利益処分の公表のルール化、さらにDB化によって、いわば「格付け」に影響することが制度的に担保されていることになると、情報公開と制裁との境界線はますます難しくなってくるな、という印象を受けました。消費者の選択のための情報提供であると同時に、それを通じて不良業者を排除するという性格がより色濃く出てくることになるのでしょう。格付けに影響する以上は、処分基準の明確化と基準に該当するときは処分しなければならないという「ルール化」がさらに求められるともいえるでしょう。

となると、現在導入されている分野は違いますが、このような制度と、前エントリであげた事故情報収集システムとが一定の緊張関係に立つような気もします。サンクションを覚悟しなければ事故情報を報告できない状況に立つ業者にそれでも情報をあげさせるためには、報告とサンクションとを切り離す措置をとるか(上記の「ルール化」と緊張関係に立つ)、それとも報告しないことがより厳しいサンクション(事実上のものも含む)につながるようにするか(厳しくするにも限界があるかも)、というくらいでしょうか。制度設計はなかなか難しそうです。試行錯誤でやっていくしかないのかもしれません。