市街化調整区域指定差止訴訟

読売新聞2008.3.18

市街化調整区域指定の都市計画案が県により進められている、鹿嶋市大野地区の地権者80人が、県を相手取り、調整区域指定の差し止めを求める訴訟を17日、水戸地裁に起こした。県は無秩序開発に歯止めをかけたいとしているが、住民側は調整区域の目的である「無秩序な市街化を防止する」という要件を欠き、違法だと主張している。
訴状によると、鹿嶋市北部の旧大野村は1975年、都市計画法に基づいて「大野都市計画区域」と指定されたが、95年に隣接する鹿島町と合併した後も、市街化区域と市街化調整区域の線引きをしないままだった。県は、大野都市計画区域と、既に線引きがされている旧鹿島町、同町と神栖市からなる「鹿島臨海都市計画区域」を統合し、一つの都市計画区域とし、大野地区全域(約4050ヘクタール)を市街化調整区域とする計画案がある。原告住民らは「開発行為や建築物の新築を原則として禁止する調整区域の指定は、客観的根拠に基づき慎重に判断されなければならない」とした上で、「大野地区はそもそも(土地の売買が制限されるなどの)農業振興地域に指定されている。また、県は計画案の中で言う『無秩序な市街化』の具体的な事実を示していない」と主張している。
 提訴後の記者会見で、原告団長の内田俊雄さん(71)は「市街化調整区域に指定された、鹿嶋市の清水地区などでは産廃業者による環境破壊が進んでいる」と訴えた。生活に窮した農家などが地中の砂利などの掘削を許し、掘削後に産業廃棄物が放置されていくケースもあるといい、原告代理人は「農業振興地域整備法だけでは済まない理由がまったく説明されていない」と疑問を呈した。
 同地区は田畑、山林が多い地域だが、東京に近く、気候が温暖なことなどから都内からの転入が進み、人口は合併後10年で約3400人増加した。県が昨年11月に開いた住民への公聴会で県は、調整区域の線引きがされていないため、小規模開発が進み、道路や排水施設などの都市計画が効率的に進まないと説明し、理解を求めていた。提訴について県は「訴状を見ていないのでわからない」とコメントした。

現在、土地区画整理事業計画の処分性に関して大法廷に論点回付され審理中と報道されていますが、仮に処分性を認める方向で変更がなされる場合、その射程が気になるところです。訴状が線引き=処分だと主張しているのかそれとも確認訴訟かはわかりませんが、いずれにせよ、従来「都市計画の処分性」が議論される際、線引きまではあまり想定していなかったようにも思います。都市計画争訟研究報告書(『新都市』2006年9月号92頁)にもみられる裁決主義による都市計画争訟の提案(これはこれで行政不服審査法改正と関連するのでしょうが)とも絡み、なんらかの方向性が示されざるをえないでしょうが、どういう方向になるか、全く予想できません。