企画趣旨:

  神戸大学法学研究科COE「市場化社会の法動態学」におきましては,世界規模で生じている社会の市場化により,これまで市場の枠組みを支えてきた法秩
序のありように大きな変容が迫られているとの認識のもとに,新たな法秩序のありかたについての学際的研究を推進してきました.2006年度から活動を開始
した本研究会は, 都市空間などの物理的公共空間管理の諸問題に加え, 情報や知識の産出活動や言説に関する公共空間を意識した上で,
これら公共空間と市場秩序との関係の法的制御を考察することを課題とします.

  第5回例会におきましては, 2人の講師をお招きし,「標準化技術に関する特許とアンチ・コモンズの悲劇」をめぐっての研究会を開催することになりました.

  李ナリ先生は,"The
Patent Subject Matter Reconfiguration and the Emergence of
Proprietarian Norms - The Patent Eligibility of the Business Methods
"と題する博士論文(同論文の要約はこちら. 日本語訳「特許対象の再編成と財産権主義の台頭―ビジネス方法の特許適格性―」(田村善之・津幡笑(訳))は北海道大学知的財産法政策学研究第9号に掲載)により、2002年9月に九州大学大学院法学府博士課程LLDプログラムを修了され、トゥルク大学(フィンランド)講師を経て、現在、北海道大学COE研究員を務めておられます.

  田村善之先生は,  『知的財産権と損害賠償<新版>』(弘文堂),   『不正競争法概説<第2版>』(有斐閣),   『機能的知的財産法の理論』(信山社),   『著作権法概説<第2版>』(有斐閣),   『商標法概説<第2版>』(弘文堂),   『競争法の思考形式』(有斐閣),   『知的財産法<第4版>』(有斐閣)『市場・自由・知的財産』(有斐閣)など, 枚挙に暇ない著書・論文を公にしておられます.

  今回の例会では、まず李先生から題目と同名の論文("Patented Standardsand the Tragedy of Anti-Commons",   邦訳:知的財産法政策学研究11号)に基づき報告していただき、その上で田村先生から「特許制度の設計に関する各種理論におけるアンチ・コモンズ理論の位置づけ」に関するご報告をいただく予定です.

  *参加にあたり, 事前の連絡は不要です.ご自由にご参加ください.

  *なお、李先生の報告は英語(通訳なし)で行われますので,必要な方は事前に上記邦訳に目を通して頂けますと幸いです。田村先生の報告は日本語で行われます.両報告についての討論は、適宜通訳を交えつつ、日本語および英語で行います.