都市計画道路見直し

中国新聞2005.12.6

山口県都市計画道、見直し方針   
 人口減少や公共事業の抑制などを背景に、道路の必要性について再検討している山口県都市計画審議会の専門部会は、都市計画決定から三十年以上たっても未整備の道路などを対象に、廃止を含めて見直す指針案をまとめた。県は来年二月、同審議会から正式に答申を受け、来年度から個別路線ごとに廃止か存続の検討を始める。
 県内の幹線道路など都市計画道路(総延長千百二十一キロ)のうち、未整備区間は三月末現在で三百八十キロ。大半は市街地に計画された幹線街路である。
 同審議会の専門部会(部会長・米谷雅之山口大名誉教授)は、未整備の幹線街路三百七十四キロを対象に(1)都市計画決定から三十年以上経過した (2)計画区域内に文化遺産や大規模建築物がある(3)路線整備が周辺の土地利用に影響を及ぼす―などの場合は存廃を検討するよう指針案に示した。幹線街路の八割は一九七五年以前に都市計画決定されている。
 人口減などの影響で交通量の減少が将来予想されるうえ、財政難による公共事業の抑制で整備に相当の年月がかかるため、県は八月、整備の必要性について同審議会に諮問していた。
 県都市計画課は「計画決定された高度成長期と比べ、社会情勢や道路の必要性は変化している。関係市町や住民の理解を得ながら検討したい」としている。(岩崎秀史)

最判2005年11月1日 昭和13年に決定された都市計画における道路に含まれる土地に建築の制限が課せられることによる損失について,憲法29条3項に基づく補償請求をすることができないとされた事例

藤田宙靖補足意見>
私人の土地に対する都市計画法(以下「法」という。)53条に基づく建築制限が,それのみで直ちに憲法29条3項にいう私有財産を「公のために用ひる」こ
とにはならず,当然に同項にいう 「正当な補償」
を必要とするものではないことは,原審のいうとおりである。しかし,公共の利益を理由としてそのような制限が損失補償を伴うことなく認められるのは,あく
までも,その制限が都市計画の実現を担保するために必要不可欠であり,かつ,権利者に無補償での制限を受忍させることに合理的な理由があることを前提とし
た上でのことというべきであるから,そのような前提を欠く事態となった場合には,都市計画制限であることを理由に補償を拒むことは許されないものというべ
きである。そして,当該制限に対するこの意味での受忍限度を考えるに当たっては,制限の内容と同時に,制限の及ぶ期間が問題とされなければならないと考え
られるのであって,本件における建築制限のように,その内容が,その土地における建築一般を禁止するものではなく,木造2階建て以下等の容易に撤去できる
ものに限って建築を認める,という程度のものであるとしても,これが60年をも超える長きにわたって課せられている場合に,この期間をおよそ考慮すること
なく,単に建築制限の程度が上記のようなものであるということから損失補償の必要は無いとする考え方には,大いに疑問がある。その意味において,原審及び
(その引用する)第1審判決は,一般的な法53条の建築制限について指摘するに止まり,本件決定から既に60年以上経過しているという本件に特有の事情に
ついての判断が明示されていない,という限りでは,上告論旨には理由があるものというべきである。

(・・・・・・)
 しかしながら,記録及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の所在する地域は,都市計画により,第1種住居地域とされ,容積率10分の20,建ぺい率10分
の6と定められていることがうかがわれ,高度な土地利用が従来行われていた地域ではなく,また,現にそれが予定されている地域でもないというべきである。
そして,本件土地の上に現に存在する上告人らの共有に係る建築物は,木造瓦葺平家建の居宅であって,これを改築するのには,法53条1項ただし書1号によ
り,同項本文所定の許可を受けることを要しないこととなり,また,これと同程度の規模及び構造の建築物を再度建築するのについては法54条3号により許可
がされるものと考えられる。もともと,本件土地は,面積合計692.32平方メートルの一団の土地であるところ,予定区域内に含まれるのは,そのうちの面
積約173平方メートル(約4分の1)の部分にとどまるから,残余の部分を敷地として同号に該当する最大の建築物を許可の下に建築すれば,それは上記の容
積率及び建ぺい率の上限に近いものとなることもうかがわれる。


 このような本件土地に関する具体的事情に照らせば,本件土地に課せられた上記の建築制限が長期間にわたっていることを考慮に入れても,いまだ,上告人ら
が制限を超える建築をして本件土地を使用することができなかったことによって受けた損失をもって特別の犠牲とまでいうことはできず,憲法29条3項を根拠
とする補償を必要とするとはいえないという評価も成り立ち得るところであり,その趣旨をいう限りにおいて法廷意見の見解はなお正当とするに足りるものであ
る。